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質マガジン質マガ

2014/04/18

質屋は世相を映す
鏡ってどういう
ことだろう。。。

質マガを通じて、質屋に興味を持っていただいた方も大勢いらっしゃることでしょう。
さて、質マガVol.1で触れた通り、質屋を利用するには免許証や保険証などの「本人確認書類」の他に、担保となる質草が必要となります。お客様からよく電話やメールで「どんなものが質草になりますか」等のお問い合わせをいただきますが、何でもかんでも質草になるわけではありません。モノのない時代は「よろず屋」と呼ばれるほど、何でも取扱っていたようですが、モノが氾濫し、デフレの現代では、取り扱える質草に限りがあります。

「質屋は世相を映す鏡である」。これは、有名な経済評論家の言葉ではなく、業界内で良くささやかれる言い回しです。質屋は鎌倉時代に発祥したと言われる、品物を担保にした庶民金融です。貸したお金を返してもらえず、質流れになったものは店頭や専門の市場(オークション)で売却処分しなければいけません。ですから、原則として「流通価値」「リセール価値」のないものは取り扱うことがないのです。つまり、質屋が扱う品物には「リセール価値」があり、その時代の流行を反映したものとなっているのです。これが「質屋は世相を映す鏡である」と言われている所以なのです。

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江戸時代には古着(着物)、反物、大工道具類、鍋等が、明治時代には、モミ種、キセル、荷車、もち米なども質草になったそうです。昭和の作家、安岡章太郎の「質屋の女房」という小説には質草として文学全集も登場します。このように、質屋の取扱い品目を見れば、時代ごとに価値のあるものが移り変わっていることがおわかりいただけるでしょう。モノのない時代は、何でも質草になったので質屋が大繁盛し、大みそかの除夜の鐘がなるまで客足が途切れなかったと聞きます。

日本が高度成長期を経て、景気が良くなると質草も様変わりします。バブル時代以降はロレックス等の高級時計、ルイヴィトン、シャネル、エルメスなどのブランドバッグが質草の主流となります。とりわけルイヴィトンはブームとよばれる程の大人気で、モノグラム柄であれば、種類や商品状態に関係なく、なんでも売れました。

また、エルメスのバーキンも「直営ブティックで5年待ち、10年待ち」というほど品薄で、未使用品やキレイな状態のものは定価以上で取引されていました。今では考えられませんが、直営ブティックで定価で買ったお客様がそのまま質屋に売却にくると、数十万円の利益が出るという時代でした。

しかし、いいことばかりではありません。これらは流行に左右され、相場が激変します。かつてはPRADAのナイロンバッグ、FENDIのズッカ柄バッグ、コルムの腕時計アドミラルズカップなどが一世を風靡し、高い相場で取引されましたが、いまや見る影もありません。少し前まではクロエ、フランクミュラー等が大人気で取引相場が高かったのですが、今や人気も落ち着き、それに伴い取引相場も弱まりました。

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かつては家電製品やカメラも主要な質草でしたが、大量生産による価格低下、デジタルグッズの普及などで一部のハイエンド機種や、マニア向けのものを除いては質草にはなりづらくなりました。

ここ数年では、金やプラチナの地金製品がメインとなっています。これは世界的な金相場の高騰が裏付けになっています。また、アジア圏を中心とした需要が高いロレックスも相場が高くなっています。

先日、某番組で紹介されていましたが、インドではリサイクルダイヤモンドの需要が高いそうです。日本には、バブル時代に売れてタンスにしまい込まれた埋蔵ダイヤが3兆円分程あるとのことです。これからはダイヤモンドが主要な質草になるかもしれません。

また、韓国ではスマホを担保にする質屋もあるそうです。日本でも、スマホやタブレットが主流な質草となる日がくるのでしょうか?

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質屋を利用したことがない方も、「質屋は世相を映す鏡」という視点で、「質屋の店頭では何が販売されているか」「質屋では何が取引対象品となっているか」などをチェックしていただければ、面白いかと思いますよ。

一方、こういった流行に左右されずに「ブリキのおもちゃ」「茶道具」「骨董品」などを取扱っている質屋もあります。ベースとなる質草は一般的に知られて処分しやすい品物なのですが、店主の趣味が高じて、マニアックなモノも取扱う店もあるのです。

質屋にもそれぞれ個性があって、面白いでしょ?